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2013.5.22 『匠の技』 第二章

第一章からのら続き…

・・・ため息の中、フヌケになった私はゴム手袋も外さずiPhoneを手にし、ある男に電話をかけた。
「おいやん、た、助けて…」そう、高校からの腐れ縁でいつメンでもある親友のMである。
彼の仕事は主に浄化槽の点検や修理などといった正に「その道」のプロフェッショナルなのだ。
もちろん我が家の浄化槽も彼に永年任せている。
私の悲痛な叫びが届いたのか「待ってろ」と落ち着いた口調で彼は電話を切り、こちらへと向かい始めてくれた。
「プロなりの技があるんだろうな」と私は大船に乗った気持ちで彼の到着を待った。
ピンポーン…。
「ワリ〜なぁ〜」ガチャっと家のドアを開けると「毎度〜」とにこやか笑ういつものMが立っていた。
私はこの時ばかり見慣れているMのことが後光差し込む神のように見えたことはなかっただろう。
しかし、そうも思った次の瞬間、私は我が目を疑った。
Mの右手に持つどこかで見たことのある物体…。
そう、それは紛れもなくいわゆる昔ながらの『シュポシュポ』ではないか。
その昔、吉本新喜劇で室谷信夫が頭にチュポ〜ンってくっつける正に『THEテッパン道具』だ…。
私は不安げに言った「古典的やなぁ、い、いけるん?」
彼は人差し指を左右に小さく降って「やっぱこれっしょ」と、ためらうことなく便器へ直行した。
「ズ○○○○ッ!!」と慣れた腰使いでシュポシュポを操り始める。
そう、Mのミュージカルが始まったのだ。
リズミカルに繰り広げられる中、聖水が辺りに飛び散る。
無論、彼は気にすることなく踊り続ける(私は少々気にしたが…)。
俺があんなに頑張ったのに、こんなんで…と半分疑いのまなざしで見ていた…と次の瞬間
「あ、あっ!」「ズゴーッ!」「やった!流れたーっ!!」
そう、彼は勝ったのだ。
その直後私は、少しでも彼の行動を疑った自分自身の考えを恥じることになる。
これぞ『匠の技』のすごさを思い知らされた瞬間だった。
Mは聖水を浴びた服を気にすることなく、笑ってこう言った「以外とすぐ流れたなハハハ」と。
私はこれは仕事だと金を払おうとしたが、Mは受け取るどころか「このシュポシュポこの家に置いときなさい」と
今ホームセンターで買って来たばかりというシュポシュポを我が家に置いた。
そしてその代金だけ握りしめ、濡れた作業着をなびかせ笑って去って行ったのだ。
私は久々に「男前の中の男前」を見た気がした。

昔から『餅は餅屋』とはよく言ったもので、やはりなんでもプロにはかなわないもんである。

私は思った。
今回のアクシデントは日頃忘れてはならない『プロの技』を再確認させてくれただけでなく、
『友情』というお金では買えない大切な何かを教えてくれた気がした。
そして決して無駄な汗と時間ではなかった・・・と。
初夏の青空のもと、すがすがしい気持ちで店に戻ったのである・・・。
有難うM。
そしてなぜだか水野春郎口調で私は言いたい
「いゃ〜、流れるってホントいいもんですね」

『ライフ』
『ライフ』 『ライフ』 『ライフ』