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2013.6.16 『ナナニヒストリー』 第三章



第二章からの続き…

...携帯に残された『ナナニ』の写真がパーになり、不安MAXの想いのまま無情にも年月は過ぎる。
預かってからはや3年…オーナー様は週一には店に顔を出してくれる。
来る度に「す、すんません、ちょっと今忙しくて…汗」
「ハハハ、いいよ急いでないから」と、優しいお言葉。
3年もあれば私の鼻毛ですら5センチは伸ばすことはでき、
県大会に出る自身があるほどの期間だ…。
それでもオーナー様はとても寛大で、私の遅い作業を静かに見守ってくれ店全体を応援してくれる。
私はそんなお言葉につい甘え、ずっと作業を何かしら理由をつけては後回しにしてきた。
あまりに遅い作業の中、オーナー様も当店で別のバイクを購入する始末。

移転してから仕事の量が格段に増え、
池ちゃんがいるにもかかわらず一向に『ナナニ』の完成目途が立たない。
こんなことでは永遠に仕上がらないのでは....。
「アカン、アカンよーっ!!」宮川大輔のように叫び、とうとう私は立ち上がった。
「もう一人雇う!」そう決意し、マブオが来てくれるようになる。
私は完全に『スーパーひとし君』になったのだ。

以来、ここ1ヶ月で作業を再開し、マブオの力を借りながらみるみる工程をこなしていく。
毎度苦笑いしていたオーナー様も、真の笑顔が見れるようになってきた。
「この勢いで突っ走るぜ!」そう思う反面
「写真なくなったからな~、組む時わかるかな...汗」と不安が拭えない日々を送る...。

そんな時だ、LIFEに一本の電話が入る。
一見のお客様からの『レストア』の依頼だ。
聞けばその車両はこれまたホンダの名車『CL72』というではないか!
CL72とは『CBナナニ』とほぼ同時期生産のもので、同じエンジンを積む兄弟バイクなのだ。
若干の構造は違うものの根本的には同じ種類
「参考になる!」私はまたとない偶然にひざまつき、天を見上げ桑原和男風につぶやいた
「神様ぁ~」
さらに偶然は重なる。

CLの電話の直前、あるバイクの配達の仕事があった。
配達先を聞くと、これまたかなりの遠方で距離にして30キロは有にある。
「と、遠いなぁ~」と、さすがにそのお客様の地域には滅多と行くことはない。
「いつがいいですか?」「水曜日でお願いします。」
地図を調べ、配達の段取りをし始めた。
『CL』の電話が鳴ったのは正にその直後だった。
CLも引き取りに来てほしいとの依頼で、私は場所を聞く。
「な、なんと!」先ほど配達をしようとしている滅多と行かない地域のほぼ同じ場所ではないか!
偶然に驚きながら日時のご都合も聞く
「水曜日でお願いします。」「な、な、なんとね!!」思わず親の故郷である九州弁がでてしまう。
配達の流れで引き取りも同時にできるではないか!
タイミングの良さに私はもう一度ひざまづく 「か、神様ぁ~」.... 池ちゃんに効果音は任せた。

その当日、段取りよく配達、引き上げ作業をこなし、無事CLの入庫となった。
まずはマジマジとバイクを眺める。
「フッフッフ...ヒントになるな...ニヤリ」
悪代官のような目つきでつぶやき、より一層『ナナニ』の制作意欲が湧いてきた。
作業のメニューは多少違えども、何としてでも『ナナニ』を先に卒業させてあげたい。
そうこうしてる中、『ナナニ』パーツの塗装が上がってくる。
生まれ変わったフレームやタンクたち....。
この間まで朽ち果てていた同じ部品とは思えない仕上がりだ。
嫁がエステから帰ってきた直後のようにキラキラしている。

日本の名車を預かる大きな責任感を胸に、プライドにかけても復活させてやる!
と意慾を燃やす私は、いつの間にか『クリスタルひとし君』に昇進していたのだった。

  ps.ちなみに『ナナニ』のオーナー様とは何を隠そうフランス料理のシェフ『N』さんであった。「ガーン!(楳図かずお風)」

  『ナナニヒストリー』 完

『ライフ』
『ライフ』 『ライフ』 『ライフ』