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2013.6.20 『趣味』 第三章



第二章からの続き

....お兄ちゃんに認めてもらうべく、私は貸してもらった本で本気で『勉強』することにした。

日中はなぜかやる気もなく、他の子とヒゲダンスを踊りミカンを投げ合う。
そうだ、私は『夜』に集中力をついやすことにした。

消灯後、枕元の灯りをつけ、ノートと鉛筆を片手にお兄ちゃんから貸してもらった『教本』を開く。
開いてみるとその本は文字だらけかと思いきや、
けっこう挿絵も入り、以外と子供の私にも興味がそそる内容ではないか。
いつものように『アラレちゃん』の続きを読みたかったが、最初が肝心、といざ勉強開始。

さぁ、まずは基本、エンジンの仕組みの勉強からだ。
絵が得意だった私は『2サイクル...4サイクル?』....
と最初は意味もわからず本の通りマネして絵を描き、それなりの文字を付け加え、理解しようと努力する。
時折ノートの端に『まこと虫』を描き脱線。
するとどうだ、漠然と教本を読んでいくと不思議な感覚に襲われ始めた。

「へ~、エンジンってこんな風になってるんだ....。」

もともと院内の『ピタゴラスイッチ』と呼ばれるほど『カラクリ好き』でも知られていた私。
ボールを転がし、それがドミノに当たり、またそれがベルを鳴らす...
そんな遊びもよく夢中になるほど『カラクリ』に関しては非常に興味があった。
本を読み進み、ふと気づく。
なんと今勉強しているエンジンの構造とは正に『カラクリ』の集大成ではないか。
ピストンが上下し、クランクを回し、同時にバルブを開閉させる....
「よ~でけちゃ~ら!(和歌山弁)」と、私はエンジンの仕組みに感動を覚えた。
学校の勉強でも理科が得意だった私は、
『化学』もふんだんに盛り込まれている機械の世界にみるみるのめり込んでゆく。
もちろん完璧に理解したわけではないが、
いつしか私は知らない間に『バイク』というモノに心から興味を持ち始めたことに気付くのだ。
それに伴い、次々とバイクの車種も覚え、
「大きなったらでったい乗っちゃる!(さらに和歌山弁)」と自然と心から思うようになってゆくのだ。

それからというもの、お兄ちゃんとは仲良くバイクの話をするようになり、
私の中にもう一つの『趣味』が増えることになるのだった。

その後、私にとってバイクとは一つの『趣味』としてライフスタイルの一部となり、
切っても切れない存在となってゆく。しかしそれはあくまでも『趣味』。
まさか『バイク屋』になるとは20歳ぐらいまでは思ってもいなかった。
そんな中、運命のいたずらか、
ふとしたきっかけでこの業界に入り、あれよあれよと時は経ち、今に至っている。
人生とはわからないものである....。

私は時折思う。人の『人生』に答えなどないのだ。
お気に入りのバイクに、新しい部品を加えることで行きたくなる場所や見せたい人も違ってくる。
人生はそれと同じで、些細な『きっかけ』や『出会い』で進む道が大きく変わることだってある。
人はそれぞれ生きていく中で、無限の選択肢にぶつかり日々暮らしているからだ。
だから人生に『正解』なんてものはない。

『人生』という名のバイクに『希望』という燃料を注ぎ、『未来』というゴールへ突っ走る。
乗り手次第でどう転がっていくかは誰にもわからない、言うならばバイクとは『人生』そのものだ。

私に一つの『趣味』を与えあてくれたお兄ちゃん。そのお蔭なのか、今私はバイク業に携わっている。
しかし今後もずっとそうだとは言い切れないだろう。
私はこれからも『運命』を素直に受け入れ、
後悔のない『人生』を全うしたい、と『趣味』でもある今の仕事に魂を込めるのだ。

『バイク』イコール『人生』そう、それが『LIFE』なのだ....

『趣味』 完

『ライフ』
『ライフ』 『ライフ』 『ライフ』