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2013.6.26 『若気の至り』



先日、仕事でバイクの試運転をしていた時のことだ。

近くにいつも走る『試運転コース』がある。
人里離れた山へ向かう信号のない広い道路。
周りには山しかなく、少々爆音を鳴らしながら走っても誰にも気を使うことは無い。
夫婦喧嘩をするときはこういう所をお勧めする。
一通りのセッティングが終了し、帰ろうとした時、私はふと考えた。
いつもならそのまま来たルートを走り帰るのだが、
その時は逆の山道を抜けて帰ろうと思い立ったのだ。
決して『エロ本』を見つけに行くためではない。
振動による走行も試したかったため、路面の悪いクネクネガタガタルートを走り出した。

「懐かしいな~」数年ぶりにその道を走り、ある一つのポイントに差しかかったときだ。
私は思わずバイクを降り道路を眺め、あの時のことを思い出した。
そう、あの痛い思い出がよみがえる.....

それは私がまだホクロから毛が生えることのない中学生のときの出来事である。
私は友達数人でその山道を抜けた先にある公園を目指していた。
各自弁当を持参し、ただ遊びに行くためにみんなは集まったのだ。
その公園に行くにはまずひたすらキツい山道を登らなければならず、
自転車だったみんなは、次に訪れる大きな『下り坂』目指してがむしゃらに押し歩く。
今の私には100%ヒザが炸裂するほどの坂だが、やはり当時はタノキン時代のヨッチャンのように若かった。

数十分後、「はぁ~はぁ~、汗」やっと頂上の下り坂ポイントが見えてきた。
「よっしゃキターッ!!」
苦労して登ってきた坂の次には恐ろしいほどの下り坂が....。
しかしそれも私達には遊びの一つで、一気に自転車で駆け降りるあのスピード感がたまらなくオモシロイのだ。
「いくぜっ!!」皆同時に走り出す
「シャーッッ!!!」みるみるスピードが上がっていき、
おそらく時速50キロは出てるであろう中盤に差し掛かったときだ。
『グラグラ』「あっ!!汗」なぜか私の自転車のハンドルが急に暴れだし、踏ん張った次の瞬間

「キーッッ!!」「あーっっ!!」「ガラガラガッシャーンッ!!!」

....次に気付いた時は見るも無残に転倒した私が地面に横たわっていた。

「イッテ〜、泣」「大丈夫かぁ!」焦った顔でみんなが駆け寄る。(若干名はニヤけていたが)
意識もあったため、一瞬大丈夫かと自分でも思ったが、ふと痛む手のひらを見て愕然とする。
左手薬指のツメが剥がれ、血まみれの上、指が変に曲がってるではないか。
体中傷まみれの私はゆっくりと立ち上がり、ポツリつぶやいた。
「か、帰るわ....」「プ......。」ギャグも言ってないのに笑いをこらえるみんな。
「ワイルドだろ~」をここで言っていれば間違いなく流行っていたのだが、そんな余裕は当然なかった。

私は一人、傷ついた体を引きずりながら来た道を引き返し、病院へ直行するハメに...。

....病院でレントゲン写真を見ながら先生は笑いながらこう言った。
「あちゃ~、手の平の骨いくつも折れてるね」
「フンガッ!汗」驚きの余り少し漏らす。

その後、処置が施され、当時夢中になっていたギターを当分諦める最悪の結果となった....。

以来、ギターの『スライド奏法』がやりずづらくなった曲がったままの左手の薬指。
あの事故がなければ今ごろは『バイク屋』ではなく、
浜崎あゆみの後ろで踊り弾くギタリスト『おっさんヨッチャン』の様になっていただろう
と、『若気の至り』を懐かしく思い返しながら私は再びスロットルを開け、頂上を後にした。


木々の切れ間から見える我が街には、いつもと変わらぬ平和なそよ風。

曇り空の下、私は曲がった指でクラッチを操る。そう、これからも....

『ライフ』
『ライフ』 『ライフ』 『ライフ』