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2013. 7.3 『グラストラッカー』



現在、当店で『グラストラッカー』という250のバイクをカスタムしている。
私はこのバイクを見る度にある友人のことが頭に思い浮かぶのだ。
高校からの友人『D』その男である。
そう、それは十数年前の出来事だ。バイク仲間の一人でもあった彼はそのグラストラッカーに乗っていた。
そんな頃のある休日のエピソードである....

『D』を含めた仲間数台でツーリングを決行。
夏の晴れた日曜日、皆お気に入りのバイクで集合し、いざ『南の海』目指して走りだす。
まさか、あのような悲劇がおとずれようとは....私はこの時まだ知る由もない。

私達は順調に国道を南に向けてひた走る。
いつものことだが、私達は常に『ふざけながら』和歌山弁で言うなら『おちょけながら』走るのが恒例になっている。
走行中、コミュニケーションがとりづらいバイクは何かしらジェスチャーが必要になるのだ。
時にはマッチョメマンのポーズで、時にはすれ違いざま見知らぬ老人に手をあげる....。

そんなふざけながらのツーリングもそろそろ中盤、気持ちのいい直線が続く中、その時は訪れた。
そう、『D』のショータイムが始まったのだ。
『D』が先頭で私はその後ろを走っている。
と、ふと前を見ていると何やら『D』が動き始めた。
バイクのシートに足を乗せ、今にもハンドルから手を離し立ち上がろうとしてるではないか。
後ろから見ていた私は「アカン、アカンよ」と、笑いながらも嫌な予感を感じる。
すると『D』は直線を見測り、とうとう手を離したのだ。
「サッ....パシッ!」すぐにハンドルをつかみ直す。
「フ~...汗」彼はシートに立ち上がろうとしたものの、やはりバランスが難しいのか瞬時に諦めた。
「ホンマろくなことせんな!汗」と思ったのもつかの間、さらに長く続く直線が訪れた。
『D』が再び挑戦し始めたのだ。
「だからアカンって!汗」「スッ......」
なんと彼は見事に両手を離しシートの上に立ち上がってみせた。
「わ~...汗」一瞬成功し、体を元の体勢に戻そうとした正に次の瞬間、私の予感は的中する

「グラ...」「アーッ!!」      「ぽろん...」       ....落ちた。

「やったーっ!!汗」
私はコロコロ転がる彼を抜き去り後ろを振り向くと、
まるで『ターミネーター2』のT1000のように直ぐさま立ち上がり駆け出す『D』の姿が。
ハッと再び目を前にやると、なんとそこには無人で走り続けるグラストラッカー。
「ギャーッ!!汗」時速50~60キロの惰性でコケることなくひたすら真っ直ぐ走ってるではないか。
道路の先を見ると遠くから1台の対向車が迫ってきている。
「アカン!ぶつかる!」
私はとっさにアクセルを開け、グラストラッカーの横に追いつき蹴りを入れようとする。
しかし反対車線に傾きだしスカ振りを食らい失敗。
そうこうしている内にどんどん対向車は近づいてくる。

「あーっ!!ぶつかる!」「キーッ!!」   「がちゃん....」

間一髪のとこでバイクはガードレールにぶつかりやっと止まった。
寸前のところでは対向車が急ブレーキで停車している。
「は~、よかった....汗」と後ろをふりむと、短距離で国体に出れるほどの勢いで『D』が走ってくるではないか。
『タタタタッ!』バイクに駆け寄るとサッっとバイクをお越し『ブルン!』とエンジンをかけ、
何事もなかったかのように「いけるな」と言い放ち再び走り出した。

皆、唖然とした表情で彼の後に続き、とりあえず次の休憩場所に停車する。

バイクを降りるやいなや皆『D』に駆け寄り、擦り傷だらけの体をいたわるどころか『説教パレード』の開催だ。
「アホかーっ!」
水泳後の『タ○袋』のようにしぼんだ『D』だが、それも一瞬、
その後もめげずに『おちょけ』ながら目的地まで走り切り、優雅に温泉につかる。
ただ、一人だけ「しみる~汗」と、気持ちいいはずの温泉が地獄の『傷口に塩』だったのは言うまでもない。

神のいたずらか、幸運にも大惨事は免れた。
その日、平然を装う彼だったが、あまりの恐怖だったのか終始『D』のギャグは冴えわたらなかった。
以来、彼の髪の毛はみるみる薄くなり、今や水を与えられていない芝生のように散らかってしまうことに....。
私はあの日の恐怖がきっかけだと確信するのであった。

『おふざけもホドホドに』

私は彼の行動のおかげで学習し、一回り大人になることができた。今は子供の説教のネタに使っている。

『グラストラッカー』を触る度、私は心の中でつぶやく

『有難うD』と.....

『ライフ』
『ライフ』 『ライフ』 『ライフ』