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2013. 7.7 『経験』



忙しい仕事の手を止め、私は車を走らせた。助手席には顔をしかめる息子。
そう、私は彼を『救急病院』に運ぶためハンドルを握っている。しかし私は余裕の表情で口笛を吹く…
さて、その訳とはいかに…

私には中2になる長男がいる。名前は『ジンセイ』だ。
今まで大きなケガもするこなくここまで育ってくれた。そんな息子に先日、一つの試練が訪れる…。

一本の電話が鳴ったのは一人で仕事を切り盛りしていた日曜の午後のことだった。
「ジンセイなんですけど釣り針が指に刺さって取れないので連れて帰ります!」
と、子供たちを『バス釣り』に連れて行ってくれた友人から連絡が入る。
「何しとんねん!」と、待つこと10分。 痛そうに眉をゆがめる長男が帰ってきた。
見ると、なかなかしっかりとルアーの針が突き刺さっているではないか。
友人が言うには「『返し』があるから引っ張っても取れないんですよね」とのことらしい。
まるで『韓流アーティスト』の世界にのめり込んで抜け出せない嫁のようだ。
「ど~れ」と私が引っ張ってみるが「イテテテ!!!汗」
と、やはり相当痛いらしく、らちがあかない。
「ん~、仕方ないな病院へ行くか」さすがにこうなると私も素人、
『ラジペン』で引っこ抜くわけにはいかないと判断し、病院へと走ることに。

道中「引っこ抜くか切開するんだろな」と、少し息子をビビらせる。
「え~麻酔するよね!汗」「そりゃ、そんだけ痛けりゃするだろうな」そんな会話の中、病院へ到着。
手続きを終え、診察を待っていると一人の看護師さんが問診しに来た。
「1がちょっと痛いで10が死ぬほど痛いだったらどれくらい?」と息子に尋ねると
「6か7くらいです」と答える。「ハッハッハ、ホンマかいな」
と、痛い経験をいくつもこなしてきた私にとっては見る限りそんなもの『屁』みたいなもんだ。
「この際、経験するがいい、男を見せろ!」そう息子をふるい立たせる。
でもケガをあまりしたことのない彼にとってはそう感じるのだろう。

その後、診察室に入り緊張する息子が診療台に寝かされ、
先生の問いかけに冷静に敬語で受け答えしている。
「こいつも少しは大人になったな....」と、少しは感心しつつ、
「泣いたらカンチョーしたる!」と息子の根性に期待した。

私は物心ついた時から『裸の大将』を見てはすぐ泣くが、
『痛さ』で涙を流したことは1度もないゆえ、是非ともここは息子に頑張って欲しいと願った。
「どんなふうに取るんだろう」と二人はドキドキしながら構えていると、
先生はおもむろに「ニッパー」と支持し、まずはルアーの先端を切った。
「なんやフツーのニッパーや....百均かな」 すると先生は次に

「『返し』のお蔭で引っ張っても抜けないから、針を逆に押し込んで突き出してくるからね」

と、ギョッと青ざめた顔の息子をよそに私は『目からうろこ』で感心する。
「な~るほど!ザ・ワールド(古)」
さらに先生がダメ押しに 「それと麻酔はしないから頑張ってね」
「うそ~っ!!」という息子の心の叫びが伝わってくる。
そうして先生は助手に支持した。 「ラジペン!」
「ラ、ラジペン?」これまたフツーのラジペンだったので少し笑う。
そして息つく間もなくとうとうその時はやってきた

「はい頑張って」   「グイ~」    「ギャーッ!!」......

思わず叫んでしまった息子。そして横では思わず笑ってしまった私。
「はい、終わったよ~」バンソウコウをペタッと貼って処置終了。
私たちはお礼を言い、診察室を後にする。
私は顔をしかめる息子に問いかけた
「どう?1から10でどれくらい痛かった?笑」 「20.....泣」 「ハッハッハ、死んどるやんけ!」

帰りの道中、私は息子に言った「よく頑張った。痛い経験をすれば次から一層気を付けるだろ。勉強になったな」と....

その晩、嫁と弟のセカイに一部始終を『桂ざこば調』で報告。
「ギャーッって叫んだわけだ!....笑」 皆大爆笑。
そして私は彼らに諭す。
「でもなお前ら、これからの一生の中で後5回は『むちゃくちゃ痛い』出来事が必ずくるぞ、覚悟するんだな」

そう、特に『男』たるもの、元々『無茶』をする生き物。
多かれ少なかれ誰でも『ケガ』というアクシデントはつきものである。
無論、私もいろいろ経験してきたし、これからもあるに違いないと思っている。
しかしその経験が人を成長させ、一周りも二周りも大きくさせてくれるのだ。
だから人間はそれを受け入れる態勢や覚悟を持つことも忘れてはならないのである。

最後に次男のセカイが言った。

「後で痛い思いするのイヤだから、今のうち自分でナイフで5回刺しておこう!」

発想が宇宙である。

『ライフ』
『ライフ』 『ライフ』 『ライフ』